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知らない知識 装置偏(その2)間違いだらけのリフロー炉選び
今回はリフロー炉です。リフロー炉の加熱原理、加熱構造の問題点(何故温度の均一性が得られないのか)、本当に窒素は有効なのか、さらには炉内が汚れる理由など様々な疑問について考えてみたいと思います。これらの疑問に対する回答から、良いリフロー炉とは何かを感じ取って頂け、より良いリフロー炉の選定にお役に立てば幸いです。
<基本加熱原理「衝突噴流」とは>
現在市販されている熱風式のリフロー炉では、理論的には「衝突噴流」という加熱方式が使用されています。はじめに、この加熱原理について考えてみましょう。
図1.各方向からの熱風による加熱
図1に種々の方向から熱風を当てて加熱する方法を示します。垂直加熱は水平加熱と比較し、約1.5倍、衝突噴流加熱では約4倍の加熱能力が得られます。このことから、現在市販のリフロー炉ではこの衝突噴流という加熱方式が採用されています。では、垂直加熱と衝突噴流とは同じ垂直方向からの加熱であるのにも係わらず、どこに違いがあるのでしょうか?衝突噴流による加熱メカニズムについてもう少し詳細に考えて見ましょう。
図2 衝突噴流のメカニズム
図2に衝突噴流のメカニズムを示します。衝突噴流では、噴出し口から噴出された熱風は、周囲の静止空気との間の摩擦により外側から内側に向かって乱流成分が順次増加していきながら、基板に到達します。このように噴出し時の垂直成分と乱流成分が混ざり合った流れとなって基板を加熱します。この乱流成分が含まれていることが、垂直加熱との大きな違いです。しかし、噴出し口での熱風の速度が大きすぎるか、基板と噴出し口との距離が短い場合は、乱流成分が充分発達する前に、熱風が基板に到達してしまうため、基板に到達した熱風には左の図に示すように、垂直成分が多く含まれ乱流成分が少なく、加熱能力が少なくなります。また、噴出し口での熱風の速度が小さすぎるか、基板と噴出し口との距離が長い場合は、熱風が基板に到達する前に乱流成分だけになり、右の図に示すように熱風が拡散してしまい加熱能力は少なくなってしまいます。このように衝突噴流では、熱風の噴出し速度と噴出し口と基板との距離さらには噴出し口の大きさなどには、最適値が存在します。図2の真ん中の図に示したものが、最適状態になります。
<リフロー炉の基本加熱構造と問題点>
図3 基本加熱構造
図3にリフロー炉の加熱ユニットの基本加熱構造を示します。リフロー炉では、上述した衝突噴流用の噴出し口を図3に示すように、複数個配置し、基板を加熱します。基板加熱後の温度の下がった熱風は、ファン&加熱ユニットで回収され、適切な温度まで加熱した後、高圧高温の空気に変換して圧力室に送り込まれます。圧力室に溜められた高温高圧の空気は、噴出し口で噴出し速度を持った熱風に変換され、基板を加熱します。これが、理想的な加熱システムです。このような加熱システムでは、基板は均一に加熱されます。それは、圧力室を持っており、しかも圧力室内を常に均一な圧力になるように制御しているからです。この圧力室内の圧力にバラツキがあると、噴出し口から噴出される熱風の噴出し速度にバラツキが発生し、基板に加熱ムラを発生させてしまうのです。実際、多くの市販されているリフロー炉で、加熱能力が足りない、基板の加熱に均一性がないなどの問題はすべてこのファン&加熱ユニットと圧力室の基本設計に問題があるといえます。筆者はこれまで数多くのリフロー炉を見てきましたが、筆者が感じた主な問題点を挙げると次のようになります。
・ ファンの能力以上の噴出し口を設けたため、圧力室内の圧力が低下し、加熱ユニットの真ん中と端部で熱風の噴出し速度が異なっている。
・ 熱風の噴出し口と基板との距離が長すぎるため、途中で乱流になってしまい、加熱能力が低下してしまっている。それにも係らず、「均一でやさしい加熱」と訳の判らない宣伝文句が並べられている。
・ 熱風の噴出し速度、噴出し口と基板との距離、噴出し口の大きさには最適値が存在するのに、やたらに変更できる設計になっている。むしろ、変更できることを大きな特長としてしている。設計することを放棄し、すべてをユーザに任せている。
・ 圧力室の圧力が均一になっていないため、圧力室にやたらと邪魔板を取り付け、むやみに複雑な構造にしている。 など
流体力学の理論に基づき、しっかりファン&加熱ユニットを設計すれば、このような問題はなくなり、シンプルで均一性の良好な加熱ユニットができると思います。
<リフロー炉で窒素は有効か>
市販されている多くのリフロー炉の中には、窒素を炉内に流し、炉内の酸素濃度を下げるようにしたものがあります。果たして、窒素は有効なのでしょうか?この疑問について考えて見ましょう。
図4 炉内での酸素の悪影響
炉内に多くの酸素が存在すると、図4に示すように、炉内で加熱された酸素がペーストはんだを攻撃します。ペーストはんだのベース剤であるロジンは酸化されやすく、ロジンが酸化されると、ペーストはんだ中のはんだ粉末さらには、部品のリードもしくは基板のパッドが酸化されてしまいます。もちろん、ペーストはんだ中にはこれらの酸化を還元する活性剤が含まれているため、酸化されたはんだ粉末などはこの活性剤により還元されます。このように、炉内に数多くの高温の酸素が存在すると、酸素による酸化と活性剤による還元が同時に進行し、結果的にはペーストはんだ中の活性剤が浪費されることになります。活性剤の本来の目的はペーストはんだ中のはんだ粉末が溶融する前後で、はんだの濡れ広がりを助けるため、部品のリードおよび基板のパッド表面の酸化物を除去することです。炉内の酸素によって、活性剤が浪費されてしまうと、本来の目的を達成することができず、濡れ不良には至りませんが、濡れ不良の前段階である、はんだボール(ペーストはんだ中のはんだ粉末の酸化が原因)がチップ部品の横に発生することになります。もちろん、活性剤が多く含まれたペーストはんだを使用すれば、この問題は容易に解決することができますが、はんだ合金中の鉛が規制されたように、次の環境規制対象はフラックス中のハロゲン活性剤だといわれています。また、活性剤を多く使用すると、活性剤が分解するときに発生するガスも多くなり、このガスが、はんだ接合部中に閉じ込められると、ボイドになることから、ボイド発生の危険性も大きくなります。このような状況を考えますと、やはり、窒素を使用し、炉内の酸素濃度を下げるということは、有効な対策であると考えられます。では、どの程度、酸素濃度を下げると効果が大きいかというと、色々な実験結果と筆者の経験から、500ppm以下にすると効果は高いと思います。
<炉内はなぜ汚れるのか>
炉内に付着している、汚れの成分には大きく分けて二種類のものが存在します。一つは黒く、油状の物質で、もう一つはちょっと黄色味掛かった粉末状の物質です。これらのものを分析した結果わかったことは、油状の物質はフラックスのベース剤として使用されているロジン(松脂)の低沸化物(100℃前後の低温で蒸発する成分)でした。本来、ロジンはリフローはんだ付けでは、蒸発せずフラックス残渣としてはんだ接合部に残留するものです。このロジンの低沸化物は、ロジン中に含まれる不純物のようなものだと思われます。このようなロジン中の低沸化物はフラックスが低沸化物の沸点以上に加熱されると炉内で蒸発し、この蒸気が炉内の温度の低い場所で冷却され、固まったものです。もう一方の粉末状の物質は、フラックス中に含まれる活性剤でした。活性剤は活性化温度に加熱されて、初めて活性剤としての役割を果たすものです。この活性化温度は活性剤の分解温度に近く、活性剤は分解直前に、被はんだ付け面から酸化物を除去するという活性剤としての役割を行い、その後分解ガスとなって炉内で、ロジンの低沸化物同様、蒸発します。この蒸発したガスが炉内の比較的温度の低い場所で冷却され、固まったものです。従って、このような汚れ成分が付着するのは、炉内でも温度の低い場所に限られます。このように、炉内の汚れは、フラックス中に含まれる基本成分が原因です。このような汚れの成分を回収する装置が取り付けられているリフロー炉もありますが、多くは蒸発した汚れ成分を捕集し、冷却して回収するという方法を採用しています。しかし、このような方法では充分な捕集効果が得られず、汚れ防止にはなっていないのが現状です。ここでも、さらに良い方法が望まれています。
<冷却能力の向上も忘れずに>
最後に、鉛フリーはんだの場合、何度もお話している通り、その機械的特性は組織依存性を持っています。従って、リフロー炉でもSnPbはんだの時よりも、冷却能力を高め、出来るだけ急冷になるようにする必要があります。
リフロー炉に関して、紙面の都合上、主な問題点だけを取り上げて話をしてきました。いずれにしても、リフロー炉ですから加熱構造が最も重要であることには、間違いありません。ここで述べたことを参考にして、是非、良いものを見分ける力を養って頂ければ幸いです。
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